広瀬すずが脱清純派
映画「怒り」で見せた覚悟と渾身演技
「あそこまでの演技をされてしまっては同世代の女優がいくら頑張っても追いつくのは難しい。よくぞ、やったという感じです」
ライバル女優を抱える芸能プロ幹部がそう白旗をあげるのだから大したものである。女優の広瀬すずがスクリーンで渾身の演技を披露。さらに評価を高めている。
映画「怒り」(李相日監督)は、「悪人」などで知られる作家・吉田修一の同名小説が原作で、渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛など豪華キャストが出演。
「怒」という血文字を残して未解決となった殺人事件を巡って、千葉、東京、沖縄を舞台に描かれる群像劇となっており、広瀬は沖縄在住の女子高生・小宮山泉を演じている。
原作を読み、自らオーディションを受けてゲットした役柄は、これまでの爽やかな青春モノのイメージをぶち壊す非常にリスキーな挑戦だが、文字どおり体当たりで挑んでいるのだ。
「基地問題で揺れる沖縄では、これまで数多く米軍兵士によるレイプ事件が発生していますが、広瀬が演じた泉は劇中でその被害者となります。
屈強な米兵2人に自由を奪われてレイプされるシーンは鬼気迫るものがありました。白い下着が生々しく引きちぎられ、とてつもない絶望感が伝わってくる。
見ていてつらくなるほどでした。その後に発したセリフにも鳥肌が立つ思いでした」(映画批評家の前田有一氏)
いずれも女子高生役の主演映画で、今年公開された2部作の「ちはやふる」では競技かるたに青春をかける役、公開中の「四月は君の嘘」では病に侵された天真らんまんなバイオリニスト役をのびのびと演じた広瀬。
「怒り」の撮影を振り返ったメディアのインタビューでは脚本を読めば読むほど、「自分の中で何かが変わりそうな予感がした」というから、まさに女優としてのターニングポイントとなる作品に巡り合えたといえるだろう。
レイプシーンの撮影は「とにかく怖くて、もがき苦しんで、ずっと泣いていた」と振り返っていた広瀬だが、厳しい演出指導で知られる李監督との出会いは、女優として一皮むけるどころか、さらなる進化を遂げる結果となりそうだ。
[via:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/190034/]