小泉今日子『なんてったってアイドル』を歌うのはイヤでした。
30年間活動できた理由は、逆に私に飛び抜けた才能がなかったから(笑)。
例えば素晴らしい歌唱力があれば音楽の道を突き詰めようと思っただろうし、本当にストイックな役作りができるのであれば女優業に没頭するんでしょうけど、そうじゃないから、どんな仕事もできちゃうんでしょうね。
例えば、みなさんがよく私の代表曲に挙げてくださる『なんてったってアイドル』なんて本当に歌うのがイヤでしたから。「またオトナが悪ふざけしてるよ」って(笑)。
ただ、客観的に見て「この曲を歌えるのは私だけだろう」っていう自信はあったし、そういう周囲の期待を感じてはいた。だから歌う。なんかいつもそういう感じなんです。
自分が主観と客観の2つに分裂していて、同時にまるで違うことを考えている。そして、その時々に応じて、どちらかの声に答えたり、その真ん中を探ったりする。それは今も変わりませんね。
ハウスについても、私がやれば大丈夫かな、という気はしていました。当時はまだ多くの人が聴いたことのない、もしかしたらとっつきにくい音楽だったかもしれないけど、私という存在自体は分かりやすいですから。
仕事の現場や遊び場で知り合った近田さんや藤原さんとファンの間に私が入れば、聴いていただけるとは思っていました。だって、私自身「ハウスが好きか?」と聞かれれば、別に好きじゃないですから(笑)。
[引用/参照/全文:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2703M_X20C12A3000000/]